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「問い」を学ぶ授業 ~Creative Learning~

こんにちは。暁の星の中学1年生は現在「Bridge Learning」という授業で、来年度、自身がどちらかを選択することになる「Creative Learning」型の授業と「Update Learning」型の授業の双方のスタイルの授業を交互に受けています。その授業を通して、自分にとって居心地の良い「学びのスタイル」を見つけているところです。

ここでは、4~5月に実施した「Creative Learning」型の授業についてお伝えします。


「Creative Learning」型授業の目指すもの

暁の星の創立の理念は「Women for Others」=「他者のために生きる女性」です。その理念はいろいろな形で実現可能なものですが、「Creative Learningコース」が目指すのは、ものづくりや仕組みづくり、共同体づくりなどの「創造」を通して「新しい価値」をつくり、個人や社会の幸福を実現しようとする生徒の育成です。

子どもたちが自ら「新しい価値」を創造できるようになるには、授業自体も誰かが見つけた「答え」を学ぶ授業から、主体的に「問い」を立てる授業へと変わる必要があるのではないか? それが新コースプロジェクトが立てた仮説です。

楽しみながら「問い」の力に出会う

「問い」の力に出会うためにまず行ったのが、楽しみながら行えるカードゲームです。

このゲームは4人一組で行い、ゲームには2種類のカードを用います。一つ目は「テーマカード」で、これには「猫」「青空」「前髪」など、さまざまな名詞が書かれており、場の中央に伏せて置かれます。もう一つは「問いカード」で、こちらには「○○が増えて喜ぶものは何?」「○○の友達は何?」「○○にハッシュタグをつけるとすると何?」といったさまざまな「問い」が書かれています。こちらの「問いカード」は各自に3枚ずつ配られます。
場の「テーマカード」を1枚めくり、その「テーマ」と結びつけたら面白い回答を引き出せそうな「問いカード」を自分の手札から各自が1枚選んで場に出して「問題文」を完成させます。「青空」という「テーマカード」に「○○の友達は何?」という「問いカード」を結びつけて、「青空の友達は何?」といった具合です。

最終的に、最も魅力的な回答を引き出せそうな「問い」を提出したとグループ内で評価されたプレーヤーが得点をもらえるというゲームです。
大切なのは「よい答え」そのものよりもむしろ、よい答えを引き出すことのできる「よい問い」が高く評価されるゲームである点です。

「問い」を抱えて街を歩く

「テーマ」を変えながら、何度かゲームを繰り返したら、今度は生徒たちが授業者の立てた「問い」から離れ、10枚の白紙のカードに自分で作った「問い」を書きつけていきます。そして、その「問い」をグループでシェアし、意見交換しながら、最終的に「自分の『問い』」を1つ決めます。

そして、その「問い」に組み合わせてみたい「テーマ」を校内や通学路、自分の日常や授業の中から20個見つける活動を行います。

「問い」を抱えて街を歩くことは、子どもたちにとって刺激的な体験だったようです。これまで何気なく歩いていた通学路の景色が、「問い」を意識することで急に鮮やかに目に飛び込んできたり、授業の中で登場した英単語が思いがけず自分の「問い」と結びついたり……。

日常の光景が「問い」との結びつきによって「当たり前でないもの」に変わった瞬間、それは子どもたちの「好奇心」=「探究心」に火をつける「学びのエンジン」となります。

自分が「大切にしたい『問い』」

自らの立てた「問い」に、ベストマッチだと自らが判断した「テーマ」。この結びつきで生まれるのは「自分だけの『問い』」であり、自分がこれから学びを進めてゆくなかで「大切にしたい『問い』」です。
それを、あるクラスでは全員が発表し、クラス全体でシェアしました。そのすべてが魅力的な「問い」でしたが、ここでは紙幅の関係上、1つだけ報告します。

「新技巧派はなぜすごいか?」

ある生徒は、「○○はなぜすごいのか?」という「問い」に、「新技巧派」というテーマを結びつけました。この子は「文豪」が大好きな子で、授業者が「新技巧派ってどんなものかな? ちょっと説明してみて」と水を向けると、それはそれは流暢にクラス全体に説明をしてくれました。「『新技巧派』は別名『新思潮派』や『理知派』とも呼ばれる、作家の流派の呼び名です。代表的な作家としては芥川龍之介や久米正雄、菊池寛などが挙げられ、頭の中で理知的に創られた美的な世界が巧みな技巧によって描き出され……」といった国語教師顔負けの見事な説明です。

それを聞く他の生徒たちのその子に向ける尊敬のまなざし……。何とも素敵な時間でした。「問い」をきっかけにその子は「自分の『好き』」を安心して周囲に開示することができました。そして、友達が「自分の『好き』」に共鳴してくれる経験もしました。これは、間違いなくその子の「学びへのモチベーション」を上げるはずです。

さらに、その子の「好き」=「興味・関心」は確実に周囲の生徒にも伝播します。図書館に行って芥川龍之介の本を目にしたとき、ふとこの授業のことを思い出し、「あぁ、これって○○ちゃんが言ってた本だ」と思って手に取る生徒も出てくるに違いありません。これは国語の教師が読書を宿題に設定して、子どもたちに無理やり本を読ませることよりも、余程高い教育効果が期待できるのではないでしょうか?

「生成AIの時代」に「問い」を学ぶ意味

近年、「Chat GPT」に代表される「生成AI」が大きな話題になっています。これはAIがインターネット上のあらゆる文章を取り込み、さまざまな言葉のつながりを知識として蓄積し、確率的に高い言葉をつなげて、まるで人が書いたような自然な回答を作成するものです。

いろいろな問題点が指摘され、議論がなされていますが、今後ますます広く普及することは間違いないでしょうし、今の中学生が社会に出るときには「AIとの共存」はむしろ当然のことになっているかもしれません。

そのとき「人間」に求められるのはどんな力でしょうか? AIから正確で、かつ魅力的な回答を引き出す「問い」を発する力は、「人間らしい」「人間にしかない」力として、きっと強く求められるはずです。

暁の星の「Creative Learning」型授業では、今後も「問い」を核に据えた授業を展開していく予定でいます。

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