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Update Learning 英語


「使える英語を増やす」 × 「身体で覚える」

慶応大学 井庭研究室 ラーニング・パターンカードより

英単語の学習というと、単語帳を使って何度も何度もノートに書いて暗記して(最近では単語学習アプリで見て覚えるように教員が指示することもありますが)、最後は小テストがアウトプットというのが、定番です。

今回のUL授業では、書いて覚える、見て覚えるではない学習法「身体で覚える」というラーニング・パターンを使って、小テスト以外のアウトプット「ジェスチャーゲーム大会」を行いました。

ここで取り入れた学習法は「Total Physical Response」と呼ばれるもので長い歴史があります。これを暁の星新コース流にアレンジすれば、生徒たちが思い込んでいる単語学習の常識を「学びほぐし」する機会となるはずです。

覚える単語は、教師が与えるのではありません
教科書の中からではなく、生徒たち自身の日常生活の中から実際に使う動詞を探していきます。そのため、生徒たちはリアルな英語表現を身体感覚に落とし込みながら、使える英語の語彙を増えていくことを実感するわけです。
つまり、教師から与えられること(input)重視から、生徒たち自身が発信すること(output)重視への転換です。

 ① 他人の意見を否定しない。
 ② 自分の意見を否定しない。
 ③ 間違いを怖がらない。
 ④ 恥ずかしがらずに何でもオーバーにやってみる。

授業のグランドルールはシンプルです。ですが、このルールを守ることができる場をどうやってつくるのかは、教師にとって大きな挑戦です。そして、教えないことが生徒たちにどんな影響を与えるか、中1で行ったUpdate Learning3時間の英語の授業を紹介します。

6月14日 動詞集め (1時間目)

まずは、どの程度単語の学習に自信があるかをジャンケンで表現。教師も一緒に自分の感情を肯定的に表現し、場をあたためるのが目的です。
自信がある人は「パー」、まあまあ自信のある人は「チョキ」、すぐ忘れる自信のある人は「グー」を出しています。

生徒たちは「日常の動詞の収集」をしました。
自分の1日の生活を思い描き、そこでの動作を表す言葉を日本語で探します。各自が付箋に書いたものを持ち寄り、グループごとに模造紙で共有。
そこには「魚を解凍する」「推し活をする」「二度寝する」「仮病で休む」などなど、ユニークで思いもかけない動詞がたくさん並んでいました!

どの動詞にしようかな?

6月21日 カードづくり(2時間目)

次は動詞の英訳です。ほとんどの生徒たちは英訳ツールを使い調べていました。検索すれば、すぐに答えに辿りつく場合もありますが、これが案外そうでない場合が多いようです。例えば、「帰宅する」という動詞。「帰宅」と検索した生徒と「帰宅する」と検索した生徒で結果がちがうという事態が起こりました。「going home」「go home」どっち?という質問が生徒たちの間で飛び交います。各グループで話し合い納得した英訳を作業カードに書き込みます。カードはipadで共有。みんなで協力して50~60個のオリジナル単語集が出来上がりました。

さあ、ジェスチャーの練習スタート❗

6月28日 ジェスチャーゲーム(3時間目)

いよいよジェスチャーゲームです。
始める前に、採点方法の確認と「MC Group」「Gesture Group」「Question Master Group」「Judge Groups」それぞれ4つの役割の内容とそれらをどのような順番で行うか決めていきました。

各自が役割を持って参加しています

採点は、Judge Groupsが納得点と驚き点をつけて行います。全部あっていたら〇、単語が一つあっていたら△と記録。ここでの重要ポイントは、正確さだけでなく、Surprising 驚きも得点となり評価されるという点です。

ジェスチャーをする生徒は身体で英語を表して、解答する人たちも相談しながらその動きの意味を考えています。ジャッジも出題者も司会者もそれぞれの役割を頑張っています。だれひとり傍観者はいない状況。みんなが自分ごととして英単語と向き合っていました。

Hello, everybody. How are you doing? First up is group 1. Please begin!
なんじゃろう?
はやく答えて〜!
出題者は、カードの表面(日本語)と裏面(英語)をクルクル。
今のどうじゃった?驚いた?納得した?
「ほめ合いの時間」あのジェスチャーわかりやすかったよ。
最後にもう一度グーチョキパー!前より少し得意になったかな。

ファシリテーターとは?教員の役割とは?

この授業は、6名の教員がかかわりましたが、実は1名をのぞき、他はみんな英語科の教員ではありません。英語の授業を英語科ではない教員が行うことについて、さまざまな不安がありました。ですが、教師から与えられること(input)重視から、生徒たち自身が発信すること(output)重視への転換には、効果的なのでは…という仮説をたてて授業設計を行いました。

特に、2時間目のカードづくりの授業は、ファシリテーターとして気づきの宝庫でした。「帰宅」と「帰宅する」という検索の仕方の違いで、得られる単語が違ってくるわけです。「go home」か「going home」かで対話をしている生徒たちに対して、教師が答えを与えることは簡単です。ですが、それは、生徒たちが自分で気づく機会を奪うことになるとも言えるのではないでしょうか。「ほんとだ!すごい発見。面白いなあ〜!」「帰宅と帰宅する、何が違うのかな〜?」など、生徒の気づきに寄り添い、その気づきに意味を与える声掛けをするのがファシリテーターとしての教師の役割なのだと思います。
また、面白いことに、教室にいる教員が英語の先生ではないと気づいた生徒たちは、「go home」か「going home」どっちが正しいか聞いてきません。質問してもきっと答えてもらえないと悟ったとき、自律が進むのかもしれません。

生徒たちが日常で単語学習を行うときに、本当に必要なスキルは何なのか。今回のUpdateLearningの授業での気づきを通して、私たちも探究して行こうと思っています。