「学び方」を学ぶ授業①(理論編)~Update Learning導入~
こんにちは。暁の星の中学1年生は現在「Bridge Learning」という授業で、来年度、自身がどちらかを選択することになる「Creative Learning」型の授業と「Update Learning」型の授業の双方のスタイルの授業を交互に受けています。その授業を通して、自分にとって居心地の良い「学びのスタイル」を見つけているところです。
ここでは、5~6月に実施した「Update Learning」型の授業について、背景となる理論と具体的な実践との2回に分けてお伝えします。
今回はその「理論編」です。
「Update Learningコース」とは?
「将来、あなたがやりたいことは何?」、われわれはよく子どもたちにそう問いかけます。たしかに、「人生をかけて取り組むべき目標」が早い段階で見つかっているのは素敵なことだし、そうした「目標」があれば、「学びに向かうモチベーション」もおのずと高まることでしょう。
でも、中学生になったばかりの生徒全員が、はたしてその「目標」に出会えているかといえばそうではないでしょうし、むしろ中学校や高等学校というのは、子どもたちがそうした「目標」=「未来の自分」に出会う場だとも思います。
暁の星の「Update Learningコース」は、自らの「知識や技能」を積み上げ、絶えずアップデートし、「自分にできること」を増やしていく過程の中で、「自分の得意なこと」や「社会や世界に自分が貢献できること」を見つけ、最終的に「やりたいこと・やるべきこと」=「人生をかけて自分が取り組むべき目標」に出会うためのコースです。
「できること」の歯車を回していくことで、それに連れて自然に「社会や世界に求められること」の歯車や「やりたいこと」の歯車も回っていくようなイメージを持っていただければよいと思います。
ブルーム・タキソノミー
文部科学省は新しい学習指導要領の中で、これからの教育で重視すべき3つの柱として次の項目を挙げます。
① 個別の知識・技能
② 思考力・判断力・表現力
③ 学びに向かう力・人間性
グローバル化とデジタル化によって、かつてないスピードで変化する社会において強く求められるのが、「主体的に問題解決に取り組み、新しい価値を創造する能力」やそれを行おうとする「姿勢」です。
したがって、先に挙げた柱では、特に②の「思考力・判断力・表現力」や③の「学びに向かう力・人間性」が学校教育で重視されることになります。
ただ、だからといって①の「知識・技能」が軽視されてよいのかといえば、それは違います。
上の図は、暁の星が「学び方改革」を実践するにあたって、プロジェクトが拠りどころにしている「ブルーム・タキソノミー」という教育目標分類です。
アメリカの教育心理学者ベンジャミン・ブルームによって提唱されて以来、現在でもさまざまな場で活用されるこの枠組みからも明らかなように、「思考力(分析)」「判断力(評価)」「表現力(創造)」は、「知識・技能(記憶・理解・応用)」の下支えがあってこそ、十分に発揮されるものです。
そもそも私たちは、自分が「知識」として持っていないものごとについて考えたり、判断したりすることはできないのです。
では、どうすれば子どもたちは効果的に「知識・技能」を身につけることができるのか?
コース制プロジェクトの出した答えは、「個別最適な学び」を実現することでした。
Update Learning型授業における
「個別最適な学び」
「個別最適な学び」として一般にイメージされるのが、子どもたちをテストの得点や偏差値で細かく輪切りにしてクラスを編成する、いわゆる「習熟度別クラス編成」でしょう。
子どもたちの理解度が揃ったクラスで、そのクラスに合った教材、そのクラスに合った進度で授業が行えるのですから、子どもたちは効率的に、自分に必要な「知識や技能」を身につけることが可能となります。
また、AIの目覚ましい進歩による「AI診断・AI教材」も「個別最適な学び」として教育現場に普及しつつあります。
テストの結果をもとに、AIが個人個人の「知識・技能」のヌケやモレを診断し、それに応じてカスタマイズされた問題を個々の生徒に与えてくれます。
これもまた、子どもたちが自分に必要な「知識や技能」を身につける上で有効な手段です。
しかし、今回私たちが「個別最適な学び」を実現するための「Update Learning型の授業」を検討する際、「習熟度別クラス編成」や「AI教材」を、コース制のメインに据えることはしませんでした。
「習熟度別クラス編成」では、先生が自分たちに合った教え方で必要な「知識や技能」を伝えてくれます。
「AI教材」では、それを解けば自分たちに必要な「知識や技能」が身につくような問題を、AIが作成してくれます。
これに慣れてしまうと、子どもたちの「学びの姿勢」はひたすら誰かに「知識や技能」を与えてもらうのを待つだけの、受け身のものになりかねません。
「知識・技能」は、それを身につけることが学びのゴールというわけではありません。それを使って思考し、判断し、表現しようとする「主体的に学びに向かう姿勢」が伴ったとき、その「知識や技能」ははじめて生きたものとなります。
ならば、「個別最適な学び」と「主体的に学びに向かう姿勢」とが矛盾してはいけない……。
そうした「主体性(学び続ける力)」につながる「個別最適な学び」として私たちが考えたこと……。
それは、教師が考える「個別最適な環境」を子どもたちに提供することではありませんでした。
本当の意味での「個別最適化」とは、子どもたち自身が「自律的な学習者」として、身につけるべき「知識や技能」に応じて、それをどのような「方法」で学べば効率的なのか、自分にとっての「個別最適」を判断し、実践できることです。
そのためには、子どもたちが自分の中にいろいろな「学び方の引き出し」をいっぱい持っていて、必要なときにその「学び方の引き出し」のうちのどれかを選択して、自在に開けられるよう準備をする必要があります。
つまり「『学び方』を学ぶ」ことが必要なのです。
次回は、「『学び方』を学ぶ」ことを目指して行われた最初の授業実践についてお伝えします。