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Update Learning 数学

 こんにちは。福山暁の星女子中学校新コース推進プロジェクトです。今回は、先日行われた Update Learning 数学の授業についてご報告させていただきます。


「素因数分解」×「量は質を生む」

慶応義塾大学 井庭研究室 ラーニング・パターンカードより

 今回、1年生は「素因数分解」に、ラーニング・パターン「量は質を生む」でアプローチしました。多様な学び方を体験することは、Update Learning の授業の重要なコンセプトの1つです。「量は質を生む」の質について、私たちは「生徒が自分で素因数分解のコツをつかむこと」という共通認識をもち、授業に臨みました。素因数分解をテーマに選んだのは、既習内容の中でも取り組みやすく奥が深いこと、また、2年次以降も(高校進級後も)その応用、活用が求められることなどが理由です。

 数学のコツをつかむために必要な練習量は生徒によって異なります。通常の授業では時間に限りがあるため、生徒がコツに気付く前に、教員が教えてしまうことがあります。そうなると、生徒は覚えるだけになったり、聞き流したり…。いくら教わっても、自分事にならなず、活用、応用まで到達しません。私たちは、なんとか授業外で量を生み出させたいと思い、宿題を課したり、小テストをするから勉強をしておくように伝えたりします。しかし、これがなかなか難しい。生徒が勝手に自分で量をこなしてくれる方法はないだろうか。「量は質を生む」の壁、これを打開するのが今回の授業構成になっています。

※ Update Learning 数学の授業は、通常の数学の授業とは別の時間に行われます。

「量は質を生む」の壁① 「数学は苦手」という思い込み

 「リケジョ」という言葉をよく耳にしますが、ここ30年で理学分野全体でみると、女性の割合は2倍以上に増えています。一方で、数学を専攻する女子学生は、ほとんど増えていないのが現状です。「あなたの国では、女性は数学に向いていないとか、女性は数学が苦手とか思われていますか?」という問いに多くの国の人は驚かれるそうです。日本で長く続く「女子は数学苦手、それはしかたない」という思い込み。まずは、こういった生徒の思い込みのフタをとる必要があります。
いつもの教室、いつもの先生という状況を取り払い、少しでも数学のイメージを変えていきたい。数学教師✕お笑い芸人タカタ先生という外部の方の力をお借りしつつ、非日常を演出しました。次の写真は、数学への興味・関心を高め、思い込みのフタをとるための動機づけの場面です。

数学教師芸人タカタ先生のオンライン授業
(初回授業時)

数の歴史や、YouTube、Google、Amazon、LINE のすべてに素数が必要であることなどに、生徒からは驚きの声が上がりました。 

「量は質を生む」の壁② 分からないことに対するモチベーション

 今の子たちの中には、まったく分からないこと、知らないことに対してはモチベーションが上がらないという子も少なくないようです。ゲームはネットで攻略法を調べてからプレイする、映画はストーリーを知っていて面白いものしか観ない、という子もいるみたいです。ただ、逆に、取っ掛かりとしての攻略法を知ると、とことんまでやり込んで、自分なりの工夫をしたりする側面もあるようです。そのようなこともあり、全部一から生徒がするのではなく、まず、ちょっと攻略法を伝えるという授業設計になっています。こちらから、少しだけ素因数分解のコツを紹介しました。

「量は質を生む」の壁③ がんばっている姿を見せたくない

 思春期の子どもたちにとって、頑張って勉強している姿をまわりの友達に見せることは、恥ずかしさやカッコ悪さといったマイナスの感情をともなう場合があります。そんな子どもたちにとって、真面目、努力家という言葉は誉め言葉ではありません。では「ゲーム」を使ってみると子どもたちの気持ちにどんな変化が起こるでしょうか。ゲームだと、どれだけやっててもまわりの友達から真面目だと思われなくて済むのではないか。今回は「ガチ素因数分解」というアプリゲームで試してみることにしました。

アプリゲームに挑戦する生徒

生徒の様子

休み時間

 初回の授業が行われた翌日、用事があって休み時間に教室に行くと、次のような光景が見られました。

休み時間
(思わず写真を撮ってしまいました)

もちろん、教員から「休み時間も素因数分解をしなさい」、「素因数分解のテストをして2学期の成績に入れます」などという声掛けは一切していません。

スコアを記録

 初回の授業時に、次の授業(1週間後)までにアプリゲームに取り組んだ際のスコアを記録しておくように伝えました。
 このゲームは、90秒間次々にランダム表示される数を素因数分解し、成功するとその数がポイントとして加算されていきます。逆に、失敗するとその数の分減点されます。(例えば123に成功すると+123点、失敗すると-123点となります。)

ある生徒のスコアシート

 8000点を越えた生徒の存在に、新コース推進プロジェクトのメンバー一同衝撃を受けました。この生徒も最初は思うようにスコアが上がらず、1000点を下回ることもあったようです。

コツを共有

 2回目の授業時に、1週間、素因数分解に取り組んだ際に見つけたコツをグループのメンバーで共有し、「コツトップ5」を作成しました。

グループでコツを共有
コツトップ5①
コツトップ5②

各グループ、様々なコツが見つかったようです。Update Learning の授業では、協働的な学びも大切にしています。

ガチ素因数分解大会

 3回目(最終回)の授業時に、ガチ素因数分解大会を開催しました。この大会は、ラーニング・パターン「量は質を生む」で「素因数分解」にアプローチした成果を表現する1つの場でもあます。生徒たちは熱戦を繰り広げてくれました。

ガチ素因数分解大会
表彰式
(教頭先生より)

生徒の振り返り

生徒の振り返り①
生徒の振り返り②
生徒の振り返り③

学び続ける生徒

 Update Learning 数学の全授業が終了した後も、学び続ける生徒がいます。ついに、10000点を突破した生徒が現れました!

全授業終了後も記録更新中!
2023年10月13日現在

最後に

 先ほど紹介した生徒の様子などから、多くの生徒は進んで量をこなすことで、質が生まれる体験をしてくれたと私たちは感じています。全てのプログラムが終了した後も、「車のナンバーとか、数字を見ると素因数分解をしたくなる」と話してくれる生徒がいることは、自律的な学習者を育てたい私たちにとって、明るい兆しです。一方で、「練習不足だった」、「苦手だから家であまりやらなかった」と振り返る生徒がいることも事実です。このような生徒たちにこそ、多様な学び方を体験させていくことが、私たちの今後の課題であると言えます。
 改めて、Update Learning の授業では、質の高い自学自習能力の育成に努めていきたいと考えています。3年次に、生徒が何をどのようにするか自分で決めて取り組む姿が理想的だと考えています。